til//ip-legal-due-diligence
ip-legal-due-diligence.mdupdated 2026-08-011,492 chars

IPおよび​法務デューデリジェンスの​事前準備

M&A​(企業の​合併・買収)の​デューデリジェンス​(DD=買収前調査)では、​財務だけでなく​知的財産​(IP)と​法務の​状態が​価格と​条件に​直結する。​本ノートは​事前に​整備しておくべき論点を​整理する。

職務発明制度

職務発明とは、​従業員が​職務の​範囲内で​行った​発明を​指す。​特許法35条が​適用される。

  • 2015年の​改正に​より、​会社は​契約や​就業規則に​よって​「特許を​受ける​権利は​会社に​帰属する」と​あらかじめ定める​ことができるようになった。
  • ただし発明者​(従業員)には​「相当の​利益」​(金銭・​現物に​よる​報酬)を​与えなければならない。

DDで​確認する​ポイント:在職中・退職済みを​問わず、​すべての​発明者からの​承継手​続きが​適正に​行われているか、​相当の​利益の​支払いに​漏れが​ないかである。

複数の​組織や​雇用関係に​またがって​行われた​開発では、​発明の​帰属​(どの​組織の​職務発明か)が​争点に​なりやすい。​原則と​して、​発明完成時点の​雇用関係と​開発業務の​内容が​判断基準に​なる。

特許登録と​権利移転

特許取得の​流れ:出願→審査請求​(出願から​3年以内)​→審査→拒絶理由への​対応→登録査定→登録料の​納付→登録。

M&Aの​実務では​次の​点を​確認する。

  • 特許の​譲渡:特許庁への​移転登録が​必要である。​移転登録が​完了していなければ、​譲渡を​第三者に​対抗できない。
  • 専用実施権の​設定:特定の​相手に​発明を​実施する​排他的な​権利を​与える​ものであり、​設定も​特許庁に​登録する。
  • 通常実施権:登録は​不要だが、​M&A後も​有効か​どうか​(チェンジ・オブ・コントロール条項の​効果)を​確認する​必要が​ある。

注:専用実施権は​登録された​排他的な​実施権であり、​特許権者自身も​その​発明を​実施できなくなる​強い​権利である。

OSSライセンス監査

買い手が​ソフトウェア企業に​DDを​行う際、​必ず確認する​項目の​一つが、​コードベースにOSS​(オープンソースソフトウェア)が​どの​程度​組み込まれているかである。

問題に​なりうる​ライセンス:

  • GPL(GNU General Public License):GPLの​コンポーネントを​含むソフトウェアを​配布する​場合、​全体の​ソースコードを​公開しなければならない​(これを​「コピーレフト​(=著作権の​伝染性)」と​呼ぶ)。
  • LGPL:ライブラリと​して​利用する​場合は​条件が​緩いが、​一定の​条件は​残る。
  • MIT / Apache 2.0:条件が​緩く、​商用製品への​組み込みが​容易である。

注:コピーレフトは​著作権​(copyright)を​反転させた​造語である。​GPLには​「自由に​利用して​よいが、​改変・配布する​場合は​同じ​条件で​公開しなければならない」と​いう​伝染性が​ある。

監査ツール:FOSSA・Black Duck・Snykなどの​商用ツールで​コードスキャンを​行い、​ライセンス違反が​ないかを​確認する。

チェンジ・オブ・コントロール条項

チェンジ・オブ・コントロール​(CoC)​条項とは、​会社の​支配権​(株主構成)が​変わった​場合に、​相手方が​契約を​解除または​再交渉できる​権利を​定めた​条項である。

確認すべき​契約:

  • 主要顧客契約:解除されれば​売上が​大きく​落ち込む。
  • 外注契約:外部​エンジニアや​パートナー企業。
  • SaaSサブスクリプション契約(自社が​ユーザーと​して​利用している​ツール)。
  • 不動産賃貸借契約

DDでは、​主要契約全体に​わたって​CoC条項の​有無と​内容を​洗い出し、​解除リスクが​高い​ものは​買い​手に​開示する。​開示しなければ​表明保証違反に​該当する。

出典・参考

148 notestil