港区中小企業融資あっせん制度ガイド — ページごとの解説(創業支援融資・創業計画書つき)
港区が発行する公式パンフレット「中小企業融資あっせんのご案内」(2026年度上半期版、2026年4月1日〜9月30日適用)を、専門用語に補足を添えながらページ順に読み解くノートである。創業者向けの創業支援融資と、その必要書類である創業計画書も扱う。
- 融資あっせんとは、区が直接お金を貸すのではなく、指定金融機関等に「この事業者に低利で貸してほしい」と仲介(あっせん)し、そのうえで区が利息の一部を肩代わりする(利子補給)仕組みである。
- 原本のPDFはこのページの下にそのまま埋め込んである(出典:港区産業振興センター)。
まず全体像(誰でも追える版)
- 区に相談を予約する(札の辻スクエア8階 産業振興課 経営支援係 / 03-6435-4620)。相談は予約制である。
- 商工相談員(=区の経営相談を担当する人。中小企業診断士=国家資格の経営コンサルティング資格を持つ専門家)と面談する。
- 区が金融機関宛のあっせん書(紹介状のようなもの)を交付する。
- その紹介状を指定金融機関に持ち込む。銀行が審査し、東京信用保証協会(=返済不能になった際に銀行へ代位弁済する公的機関。以下「保証協会」)の保証を付けて融資を実行する。
- 実行後、区が利息の一部を補助する(利子補給)。
要点:あっせん書が交付されても融資が確定するわけではない(最終審査は銀行と保証協会が行う)。申込は原則として代表者本人が行い、金融機関・税理士・コンサルタント等による代理申込は認められない。
原本PDF(融資あっせんのご案内、全16ページ)
ページごとの解説
表紙(1ページ目):誰が使えるか、要件
「この制度を使える人」は大きく3つの条件に整理できる。
- 対象者:中小企業者等、中小商工業団体、小規模企業のいずれか。
- 中小企業者等=資本金1,000万円以下、または従業員100人以下(卸売・小売・サービス業は30人以下)で、保証協会の保証対象業種を営む者。
- 小規模企業=常時使用する従業員20人以下(卸売・小売・サービス業は5人以下)の者。
- 区内で事業を営んでいること(法人は本店が港区内に1年以上登記され、実態のある事業所を持ち、同一事業を1年以上継続していること)。
- シェアオフィス・コワーキングスペース(複数事業者が共用するオフィス)は対象になる(継続利用契約があることが条件)。バーチャルオフィス(住所のみ借りる形態)は原則対象外。
- 「同一事業を1年以上継続」=初売上から1年以上経過していること。
- 税金の滞納がないこと(特別区民税・都民税。法人は法人都民税・法人事業税を完納していること)。
補足:創業者(これから創業する人、または創業から1年未満の人)は、この一般要件ではなく「創業支援融資」を見るべきである(後述)。
連絡先:〒108-0014 港区芝5-36-4 札の辻スクエア8階/受付は平日9:00〜17:00。
2〜3ページ目:手続きの流れと共通ルール
- 融資あっせん制度の流れ:①あっせん申込 → ②あっせん書交付 → ③融資申込 → ④保証申込 → ⑤保証の可否通知 → ⑥融資実行(保証料は入金前に差し引かれる)→ ⑦可否報告 → ⑧利子補給。
- 融資対象にならない資金使途:生活費、納税資金、代表者報酬、投機資金(=値上がり益狙いの取引)、借入金の返済、資本金への充当、300万円以上の車両購入等。既に支払い済みの費用は対象外。
- 同一制度への追加申込:原則として限度額内で1回(一部は2回まで可)。
- 相殺条件付き融資=既存借入の残返済期間が1年以内で、同一制度・同一金融機関・同一支店に申し込む場合、既存借入と相殺する形で申し込める。
- 利子補給の停止:本店を区外に移転した場合、区内の事業実態がなくなった場合、休廃業した場合、全額繰上返済した場合、虚偽申請が発覚した場合等に区の利子補給は停止する(過払い分は返還)。
- 返済条件の変更:返済が困難になった際、所定の申請様式で返済期間の延長を認める制度(当初期間+最長2年、24か月の据置期間を含む/通算4回まで)。利子補給は遡って適用されないため、申請の遅れに注意が必要。
- 信用保証料の補助:保証協会の保証料(保証を受ける対価。原則申込者負担)の全部または一部を区が補助する場合がある。緊急支援資金と経営改善資金は全件が補助対象。
- 創業アドバイザーの派遣:これから創業する人・創業1年未満の人に対し、中小企業診断士を無料で最大3回派遣し、港区所定の創業計画書の作成を支援する。
4〜7ページ目:融資メニュー一覧(金利・限度額・期間)
港区の制度融資の一覧。借主負担の金利(自分で払う利息)+区負担の金利(区が肩代わりする利息)=約定上の表面金利という構造になっている。主な商品の抜粋(2026年4月1日時点)。
| 制度名 | 限度額 | 借主負担利率 | 期間(据置含む) | 一言でいうと |
|---|---|---|---|---|
| 一般経営資金(一般) | 3,200万円 | 1.35%〜 | 運転7年/設備9年 | 一般的な運転・設備資金 |
| 一般経営資金(短期) | 400万円 | 1.0% | 1年 | 短期のつなぎ資金 |
| 小口零細企業保証A | 2,000万円 | 1.15%〜 | 7年 | 小規模事業者向け |
| 小口零細企業保証B | 500万円 | 0.6% | 5年 | 個人事業主向けの小口 |
| 小口チャレンジ支援 | 1,000万円 | 0.4%〜 | 7年 | 創業5年未満の小規模事業者 |
| 緊急支援資金(セーフティネット保証1〜6号) | 2,000万円 | 0.1%〜 | 7年 | 業績悪化・災害時 |
| 経営改善資金 | 1,000万円 | 0.3%〜 | 5年 | 売上5%以上減少時 |
| 区内産業活力向上資金 | 各2,000万円 | 0.6%〜 | 7年 | 経営革新・事業承継等(計画書が必要) |
| 環境配慮資金 | 各2,000万円 | 0.1%〜 | 7年 | 省エネ・環境設備 |
| 資金繰り改善資金(借換・一本化) | 3,000万円 | 1.35%〜 | 10年 | 複数借入の一本化 |
| 創業支援融資 | 1,500万円(初売上前は1,000万円) | 0.2% | 7年(据置1年) | 創業者向け・創業計画書が必要 |
- 据置期間=借入当初、元金(借りた元本)の返済を猶予される期間。利息のみを支払う。創業期の手元資金を厚く保つための安全弁である。
- セーフティネット保証=取引先の倒産、災害、業績悪化等で経営が苦しい中小企業のために、国が別枠の保証を確保する制度(1〜8号)。区が認定書を発行する。
- 経営革新=新しい製品・サービス・やり方で経営を改善する計画。都知事の承認が必要。
8〜9ページ目:申込に必要な書類
共通申込書類(創業支援融資を除く)の主な項目。
- 港区中小企業融資あっせん申込書(区所定の複写式用紙)
- 同意書(代表者の実印が必要)
- 直近の確定申告書・決算書(勘定科目の内訳明細付き)/必要に応じて試算表
- 直近の納税証明書(法人=法人都民税・法人事業税、個人=特別区民税・都民税)
- 登記事項全部証明書(商業登記。法人のみ、発行3か月以内)
- 実印と印鑑登録証明書(発行3か月以内)
- 事業所の実態を確認できる書類(賃貸借契約書等)
- 見積書・契約書(設備資金の場合)
このほか、申し込む融資の種類ごとに追加書類がある(経営改善資金の場合は試算表・要件確認シート・経営改善計画書等)。
10〜11ページ目:セーフティネット認定と「創業支援融資」の詳細
ここが創業者にとって最も重要なページである。
創業支援融資の対象条件(いずれかに該当し、港区内で事業を営む者)。
- (1) 現在事業を営んでいない個人で、個人としては1か月以内、法人設立の場合は区内で2か月以内に創業する具体的な計画があり、必要な許認可等の見込みがある者。
- (2) 中小企業である法人で、新たに法人を設立し2か月以内に創業する具体的な計画がある者(新設法人の筆頭株主等になる場合)。
- (3) 以前事業を営んでいなかった個人で、既に創業しており創業日(=初売上が発生した日)から1年以内の者。
あっせん限度額:(1)(2)は1,000万円以内、(3)は1,500万円以内。運転資金は原則「支出の3か月分以内」。
必要書類の要点:あっせん申込書、同意書、創業計画書(区所定の様式。初回面談時に交付)、申込者の所得証明書または課税証明書、住民票、自己資金を証明できるもの(通帳等。創業計画書の「自己資金計算表」「資金計画」と整合させる)、登記事項全部証明書(法人)または開業届(個人)、実印と印鑑登録証明書、初売上の請求書控え等(条件(3)の場合)、本店の事業実態を示す書類(賃貸借契約書等。バーチャルオフィスは対象外)、設備の見積書、既存法人が筆頭株主であることを示す書類(条件(2)の場合)。
利用の流れ:対象条件を確認する初回面談(約1.5時間、原則代表者本人)→ 約1時間×3回程度で創業計画書を作成(同じ商工相談員が継続して担当)→ あっせん書交付 → あっせん書と創業計画書を持って金融機関へ。即日あっせんはできない点に注意。
補足:「現在事業を営んでいない個人」とは、他法人の代表者ではなく、原則として給与所得以外の所得がない個人を指す。フリーランス収入や不動産賃貸収入がある場合は「事業を営む個人」とみなされる。
12〜13ページ目:低利融資あっせん制度の紹介(緊急支援・経営改善)
物価高騰等で資金繰り(=手元資金のやりくり)が厳しい中小企業向けの2制度をやさしく紹介するページ。
- 緊急支援資金:限度額2,000万円、借主負担0.1%、7年(設備は8年、据置1年)。セーフティネット保証1〜6号の認定が条件。
- 経営改善資金:限度額1,000万円、借主負担0.3%、5年(据置1年)。直近3か月の売上が前年(または前々年)比5%以上減少し、かつ区の商工相談で経営改善計画書を作成することが条件。
14〜15ページ目:経営者保証非提供、なんでも相談コーナー、取扱金融機関
- 事業者選択type非提供制度=一定の財務要件を満たせば、通常よりやや高い保証料を上乗せする代わりに、経営者を連帯保証人にしない(個人保証を付けない)ことを選べる制度。上乗せ分の保証料は区が全額補助する。創業支援融資と小規模企業融資を除く区の制度融資が対象。
- 連帯保証=会社が返済できない場合に経営者本人が全額を代わりに返済する義務。これを外せる意味は大きい。
- 「なんでも相談」コーナー:札の辻スクエア8階で、信用金庫・銀行・社会保険労務士会・保証協会が曜日ごとに無料の経営相談を実施する(前営業日16時までに要予約)。
- 取扱金融機関一覧:みずほ、三菱UFJ、三井住友、りそな、きらぼしなど区内の主要支店と、各信用金庫・信用組合が掲載されている。
創業支援融資の必要書類:創業計画書
港区の創業支援融資には港区所定の創業計画書様式が必須である。これは商工相談員との面談(約1時間×3回程度)で一緒に作り上げていくもので、様式自体は初回面談時に交付される。
- 全6枚(本体3枚+補足資料3枚)。
- この計画書を作成することは、特定創業支援等事業(=自治体が国の制度に基づき創業者を支援する事業。修了すると登録免許税の軽減等の特典がある)の認定要件にもなっており、別途申請が必要。
- 作成後は創業後3年度にわたるフォローアップ巡回相談が実施される。
- 自己資金は保証協会が独自に再評価する(申告した自己資金がそのまま認められるとは限らない)。
- 本体(記入様式)はExcelファイル(記入例つき)で配布される。表紙PDFは以下に埋め込んでいる。
手元にある01_創業計画書.pdfと様式は同じか → 別物である
手元の01_創業計画書.pdfと港区の創業計画書を比較した結論を示す。
| 項目 | 01_創業計画書.pdf(手元にあるもの) | 港区の創業計画書(今回ダウンロードしたもの) |
|---|---|---|
| 発行元・様式 | 日本政策金融公庫(JFC)国民生活事業の創業計画書 | 港区所定の様式 |
| 構成 | 創業の動機/経営者の略歴/取扱商品・サービス/従業員/取引先/関連会社/借入の状況/必要な資金と調達方法/事業の見通し/自由記述(全10項目) | 表紙+本体(補足資料3枚を含め全6枚)。「自己資金計算表」「申込期間の支出と資金調達」等、港区独自の項目構成 |
| 署名・押印欄 | JFC提出用(作成者=代表者) | 作成を支援した中小企業診断士・商工相談員・創業アドバイザーの氏名・押印欄がある |
| 作成方法 | 申込者本人が作成 | 商工相談員との面談で一緒に作成(様式は初回面談時に交付) |
| 位置づけ | JFC(政府系金融機関)への申込書類 | 区のあっせん+特定創業支援等事業の認定要件 |
結論:様式は同じではない。01_創業計画書.pdfは日本政策金融公庫(通称「公庫」)向けの様式であり、港区の創業支援融資では港区所定の創業計画書を別途作成する必要がある(しかも区の商工相談員との面談を通じて作り上げる)。内容(創業の動機、売上計画、自己資金等)は使い回せるが、様式自体は作り直しになる。
このノートの使い方(港区の創業支援融資に申し込む人向け)
- まず上記の「10〜11ページ目」(創業支援融資の対象条件・必要書類・手続きの流れ)を読む。
- 対象条件(3)(創業日=初売上発生日から1年以内)に該当するか確認する。該当すればあっせん限度額は1,500万円までになる。
- 必要書類を事前に揃える(特に④所得証明書または課税証明書、⑥自己資金を証明する通帳、⑩本店の実態を示す賃貸借契約書)。
- 産業振興課 経営支援係(03-6435-4620)に面談を予約し、商工相談員と一緒に港区所定の創業計画書を作成する(JFCの様式は流用できない)。
出典・参考
- 港区産業振興センター — 融資あっせんのご案内 — 公式ページ(ガイドPDFの配布元)
- 港区産業振興センター — 創業支援(創業支援融資) — 創業計画書様式の配布元
- 港区公式サイト — 中小企業融資制度 — 区の制度ページ