タクソノミー(分類体系)の基礎 ── 知識の地図はどう描かれてきたか
世界中の図書館が本を棚に並べるとき、何らかの分類体系(=タクソノミー)を使っている。これは「人類の知識をどう切り分けるか」という哲学的な問いへの答えでもある。til(このノートサイト)を整理する目的で読んでみると、見え方が変わった。
タクソノミーとは何か
語源はギリシャ語の taxis(配置)+ nomos(法則)。生物学のリンネ分類が出発点だが、現代ではこれらをまとめて「知識組織化システム(KOS = Knowledge Organization System)」と呼ぶ。書誌分類・ファセット分類・シソーラス(=同義語や関連語を体系化した語彙集)・オントロジー(=概念とその関係を形式的に記述した体系)、さらにはフォークソノミー(=利用者が自由にタグを付ける分類方式)までを覆う大きな傘である。
軸は 2 つある。
- 列挙型(enumerative):カテゴリを事前にすべて列挙する。DDC・LCC・NDC が代表例。
- 分析合成型(analytico-synthetic)/ファセット型:主題を場所・時代・形式・言語などのファセットに分解し、コードを組み立てる。UDC・コロン分類法が代表例。
列挙型は理解しやすいが拡張に弱い。合成型は表現力が高いが学習コストが高い。til のような個人ノートでは、この両極のどこに位置取るかが設計判断になる。
5大分類体系の概要
| 体系 | 起源 | トップレベル | 一言で |
|---|---|---|---|
| DDC(デューイ十進分類法) | 1876年・米国 | 10(000〜900) | 世界20万館が採用。階層的・列挙型で3桁を基本とする。 |
| LCC(米国議会図書館分類法) | 1897年・米国 | 21(A〜Z) | 米国議会図書館の蔵書に基づく。理論より実用重視の列挙型。 |
| UDC(国際十進分類法) | 1905年・ベルギー | 9(0〜9、4は空) | DDCをファセット化。+ : / で組み合わせ可能。 |
| NDC(日本十進分類法) | 1929年・日本 | 10(0〜9) | DDC派生。日本の図書館の99%が採用。 |
| ブルームのタクソノミー | 1956年・米国 | 6段階(記憶〜創造) | 学問分野ではなく学習目標を分類する。tilの「どう学んだか」という軸に関わる。 |
ほかに重要なものとして:
- OECD FOS(研究分野コード) ── 学問分野コード。自然科学・工学・医学・農学・社会科学・人文学の6大分野。論文統計など行政用途で使われる。
- Wikipediaカテゴリ ── 厳密な木構造ではなく有向グラフ(=矢印付きのつながりで表す構造)。複数の親を許容し、循環は禁止される。ガイドラインで運用される緩やかな分類である。
- フォークソノミー ── 利用者のタグから自然発生する分類。階層はなくボトムアップ型。Vander Wal が2004年に命名した。
5大分類体系を一言で比較する
- DDC:世界標準。階層は深いが硬直的。AI のような新分野は既存の番号に押し込まれがちである。
- LCC:学術向け。理論というより「自館の蔵書をどう整理するか」に近い。表現力は低いが受け入れ範囲は広い。
- UDC:最も表現力が高い。場所
(73)、時代"19"、言語=111のようなファセットを付加できる。 - NDC:日本の知識地図。DDCと互換性を保ちながら日本史・日本地理を優先し、「歴史200、地理290」のように配置する。
- ブルーム:主題分類ではなく認知レベルの分類である。til を「想起型」「分析型」「創造型」に切り分けると別の見え方になる。
タクソノミーがtilに示唆すること
結論は3つに集約される。
- トップレベルは少ないほうがよい ── DDC 10、UDC 9、NDC 10。10を超えると人間の作業記憶(=短時間だけ情報を保持する記憶)に負担がかかる。tilの6分類はむしろ少なすぎるかもしれない。
- ファセットを分離する ── UDCのように「主題×時代×場所×形式」を独立した軸にすると、タグの重複を減らせる。tilの現状のタグはこの分離があいまいである。
- 列挙型とフォークソノミーは補完関係にある ── 階層は安定した骨格、タグは生きた肉である。Wikipediaもこの2層で運用されている。
学術分野での合意は「純粋な階層は時代遅れ、純粋なフォークソノミーは検索を壊す、ハイブリッドが現実解」というものである。til はすでにこの形に近いが、軸の取り方を見直す余地はある。
出典・参考
- Wikipedia: Dewey Decimal Classification — 百科事典
- Wikipedia: Library of Congress Classification — 百科事典
- Wikipedia: Universal Decimal Classification — 百科事典
- Wikipedia: 日本十進分類法 — 百科事典
- Wikipedia: Bloom's taxonomy — 百科事典
- Wikipedia: Folksonomy — 百科事典
- Wikipedia: Fields of Science and Technology (OECD FOS) — 百科事典
- Wikipedia: Wikipedia:Categorization — 百科事典
- Vander Wal, T. (2005).「Folksonomy Coinage and Definition」— vanderwal.net