フォークソノミー vs 階層分類 ── tilに合う設計
カテゴリ(階層)とタグ(フォークソノミー=利用者が自由にラベルを付ける分類方式)は対立する概念ではなく、実用上の解は両者を「2層構造」として共存させることだ。ただし til(このノートサイト)のように 18 件程度の規模でこれを語ると過剰設計に見える。以下、順に整理する。
用語
- 階層分類・タクソノミー(=木構造の体系的分類):木構造。1 ノード=1 親。DDC・LCC・NDC が典型で、トップダウン設計である。
- フォークソノミー:利用者が自由にタグを付ける。木構造ではなく平坦なラベルの集合。del.icio.us・Flickr・Twitter のハッシュタグが源流であり、Thomas Vander Wal が 2004 年に folk(民衆)+taxonomy(分類)から命名した。
- ファセット分類(=主題を独立した軸に分解する分類法):主題を場所・時代・形式・テーマなど独立した軸に分解する。UDC・コロン分類法が典型で、階層とフォークソノミーの中間に位置する。
Vander Wal 自身はフォークソノミーを 2 種類に分けている。
- 広域フォークソノミー(broad folksonomy):多数の利用者が同じ資源にそれぞれタグを付ける(del.icio.us)。タグの頻度分布そのものが情報になる。
- 狭域フォークソノミー(narrow folksonomy):作成者本人(または少人数)だけがタグ付けする(Flickr の写真)。til はこちらに該当する。
階層分類の長所と短所
長所:
- 全体を把握しやすい。「何がどこにあるか」が一目でわかる。
- 同じルールで拡張し続けられる。蔵書管理の方式として高度に洗練されている。
- ナビゲーションが安定する(URL を含む)。
短所:
- 1 資源=1 箇所という制約。境界事例では常に妥協を迫られる(「Claude Code は AI かエンジニアリングか」)。
- 新分野への追随が遅い(DDC が AI を 006.3 に押し込むのが典型例)。
- 設計者の世界観による偏りが固定化される。
フォークソノミーの長所と短所
長所(Wikipedia の要約による):
- 学習コストがゼロ。書き手自身の語彙をそのまま使える。
- 多次元的:1 つの資源にいくつでもタグを付けられる。
- ロングテールを拾える。
- 文化的・政治的な偏りから自由である(原理的には)。
短所:
- 同義語問題:
LLM/大規模言語モデル/言語モデルが別々に分かれてしまう。 - 多義語問題:
Python(言語 / 蛇)。 - 粒度のばらつき:
Gitとバージョン管理が同じ重みで並んでしまう。 - スパムやノイズへの耐性がない(複数人が共同でタグ付けする場合)。
- 検索には強いが、全体像が壊れる(タグ 1,000 件のリストは使い物にならない)。
tilの現状を診断する
_data/taxonomy.json(タクソノミーのデータファイル)を見ると次のとおりである。
- トップカテゴリ 6 個 = 階層(engineering / ai / design / product / mind / life)
- タグの集合 = 狭域フォークソノミー(自己付与、同義語の統制なし)
すでにハイブリッドではあるが、問題も見える。
認知科学(7 件)/学習理論(6 件)── 両者はまったく同じ 6 件を共有している。実質的に同義のタグが分裂した状態である(広域フォークソノミーなら自然に収束するはずが、狭域では起こらない)。Claude Codeの 5 件はai(3 件)+design(2 件)に分かれている。カテゴリの境界をタグがまたぐ、ハイブリッドがうまく機能している例である。lifeは 0 件のまま。トップカテゴリという「箱」は用意したが中身が来ない。階層型に典型的な弱点である。- タグの粒度が混在している:
Git(具体的なツール名)、バージョン管理(概念的な領域)、Webホスティング(技術カテゴリ)。
tilに合う設計 ── 暫定結論
規模が小さい(約 50 件)うちは、次の方針が妥当である。
- トップカテゴリは固定し、ナビゲーションの骨格とする。ただし「使われていない箱」は閉じる勇気を持つ(
lifeが 3 か月空なら統合する)。 - タグは狭域フォークソノミーのまま、軽い統制を導入する。
- 同義語ルール:
認知科学/学習理論のどちらを正式表記にするか決める。 - 粒度ルール:タグを「ツール名」か「広い概念」のどちらかに揃える。両者を混在させない。
- 同義語ルール:
- ファセットの導入はまだ早い。 100 件を超えたら、ファセット(主題×形式×時代)を検討する。
要するに、「階層+統制付きタグ」の 2 層構造で十分である。Wikipedia のカテゴリも同じ思想であり、ガイドラインで運用される狭域フォークソノミーだと言える。
なぜ純粋なフォークソノミーにしないか
til は作品群であって図書館の蔵書ではない。書いているのは中村本人だけであり、読み返すのもほぼ本人である。「全体を一目で見渡せること」の価値が、検索性を上回る。フォークソノミーが統計的に意味を持つのは、多人数が関わる大規模な場合に限られる。18 件のノートに対してタグ 30 個は、ノイズに近い。
出典・参考
- Wikipedia: Folksonomy — 百科事典
- Wikipedia: Faceted classification — 百科事典
- Wikipedia: Wikipedia:Categorization — 百科事典
- Vander Wal, T. (2005).「Folksonomy Coinage and Definition」— vanderwal.net
- Peters, I. (2009). Folksonomies. Indexing and Retrieval in Web 2.0. De Gruyter Saur.