ロックウェル・インターナショナル —— スペースシャトルと冷戦航空宇宙を支えたコングロマリット
1919年にトラック車軸メーカーとして創業したロックウェル・インターナショナルは、数十年にわたる買収・合併を経てアメリカ屈指の防衛コングロマリット(=多業種にまたがる複合企業)に成長した。スペースシャトル本体・B-1爆撃機・主要ロケットエンジンを製造したのち、2001年に解体した。
創業と成長(1919〜1973年)
- 1919年、ウィラード・ロックウェルが「ロックウェル・スプリング・アンド・アクセル」を創業した。トラック車軸用の新型ベアリング(=軸受)技術が創業の発明である。
- 主な合併は、ノースアメリカン航空(1967年→ノースアメリカン・ロックウェル)、コリンズ・ラジオ(1973年)、ロケットダイン(1984年再合流)である。
- 1973年、ウィラード・ロックウェル Jr. のロックウェル・マニファクチャリングと合併し、「ロックウェル・インターナショナル」に改称した。
- 最盛期には航空宇宙・アビオニクス(=航空機搭載の電子機器)・重トラック車軸・印刷機・モデムチップという複数の市場で同時に首位級の地位を占めた。
主要製品
- 航空機:B-1 ランサー(戦略爆撃機)、OV-10 ブロンコ。合併前のノースアメリカン時代には F-86 セイバー、P-51 マスタングも手がけた。
- 宇宙船:アポロ司令・機械船(CM/SM)、スペースシャトル・オービター(=有翼の本体部分)。
- ロケットエンジン(ロケットダイン部門):F-1(サターン V 第1段)、J-2(サターン V 上段)、RS-25 / SSME(スペースシャトル主エンジン)。
- 電子・半導体:14.4Kbps モデムチップセット(1990年代初頭、多数の消費者向けモデムに搭載)。シャープの QT-8D 電卓には1968年の共同開発でロックウェル製 LSI(=大規模集積回路)を供給した。
- GPS 衛星:初期の Block I/II GPS 衛星群の大部分を製造した。
解体(1978〜2001年)
- 1978年にウィラード・ロックウェル Sr. が死去し、1979年に Jr. が引退した。その直後から段階的な解体が始まった。
- 1980年、汎用航空機(ジェネラル・アビエーション)部門をガルフストリーム・エアロスペースに売却した。
- 1996年12月、宇宙・防衛部門をボーイングに売却し、「ボーイング統合防衛システム」部門となった。
- 半導体事業はスピンオフ(=事業を分離して独立会社化すること)し、Conexant Technologies(モデム・ケーブルチップ)となった。
- トラック・自動車部門はスピンオフして Meritor となり、のちに Arvin Industries と合併して ArvinMeritor となった。
- 2001年、残余事業がロックウェル・コリンズ(アビオニクス・通信)とロックウェル・オートメーション(産業システム)に完全分裂し、ロックウェル・インターナショナルは消滅した。
- 2018年、ロックウェル・コリンズはユナイテッド・テクノロジーズ(現 RTX、コリンズ・エアロスペースの親会社)に買収された。
まとめ
ロックウェル・インターナショナルは、20世紀半ばのアメリカ防衛産業複合体(=軍需産業と政府・軍が一体化した構造)を映す典型例である。トラック部品メーカーが冷戦の軍需契約と宇宙開発予算に乗ってスペースシャトルと主要ロケットエンジンの製造企業へと成長し、そうしたコングロマリットを正当化する戦略的根拠が失われると解体された。
出典・参考
- Wikipedia: ロックウェル・インターナショナル(日本語) —— 百科事典
- Wikipedia: North American Aviation —— 百科事典
- Wikipedia: Rocketdyne —— 百科事典
- Wikipedia: Collins Radio —— 百科事典
- Wikipedia: Space Shuttle orbiter —— 百科事典