バリアントクエリ設計 — 一要素だけを変えて効果を分離する
バリアント(variant=変形版クエリ群)とは、1つのテンプレートから1つのスロット(差し替え可能な項目)だけを差し替えて生成するクエリセットのことである。今回は「地域名」だけを変え、業種と意図を固定したまま、AI検索の出力差を地域という一要因に帰属させる。
基本概念
- テンプレート+スロット方式:業種と意図を固定したまま地域名だけを入れ替える。
- 科学実験の原則である「独立変数(=実験で操作する要因)を一つに絞る」という考え方を、自然言語処理の評価に適用したものである。
- 学術的な系譜としては、perturbation analysis(摂動解析=入力に小さな変化を与えて出力の変化を観察する手法)、invariance test(不変性検定)、minimal pair(最小対=1点だけ異なる比較対象のペア)に連なる。
地域バリアントが測定するもの
- 地域感度(regional sensitivity):地名を変えるだけで、引用されるドメインやブランド言及率が実際に変化するかどうかを見る。
- ローカルブランド可視性:地域チェーン店が、その地域を指すクエリでのみ言及されるかどうかを見る。
- 日本語ドメイン比率:食べログ・ぐるなびなどへの依存度が、東京と地方都市とで異なるかどうかを見る。
106問の構成(gv001〜gv106)
- 6業種で構成する:飲食(25問)・医療(20問)・不動産(20問)・旅行(15問)・法律(10問)・教育(10問)。
- 都市バイアス(=大都市だけに結果が偏ること)を避けるため、政令指定都市・地方中核市・観光地を混在させている。
- n(サンプル数)=106は探索的(exploratory)な位置づけであり、主となる600問の補完的な記述統計にとどまる。仮説検定ではない。
注意点
- 地名ごとに文字数や母音の数が異なるため、地域そのものの効果と表層的な効果(トークナイザ=文章を単語などの単位に分割する処理の挙動の違い)を完全には分離できない。
- 主要都市のみを対象としているため、農村部や名前の挙がっていない地域への一般化はできない。
- 結果は地域感度が存在することを示唆する記述統計にとどまり、確証的な仮説検証としては不十分である。
この設計が示す要点は、スロットを一つだけ差し替え、出力の差分を観察することが、AI検索測定における最小の再現可能な単位だという点である。
関連ノート
- AI Search Evaluation: The 12 Metrics — Gateway
- AI Search Evaluation ①Citation Rate — How Many URLs Are Pulled In Per Answer
- AI Search Evaluation ②Source Diversity — How Unskewed the Cited Sources Are
- AI Search Evaluation ③Accuracy Score — How Often It Answers Factual Questions Correctly
- AI Search Evaluation ④Answer Length — How Many Characters It Returns to the User on Average
- AI Search Evaluation ⑤Japanese Domain Ratio — How Often It Pulls In .jp-Family Domains